
このコラムは、極力時期に合ったものをと考えて書かせていただいてますが、
今回は菊花賞TRシーズンということでこのような内容になりました。
京都新聞杯が施行され ていた10月半ばは、今年からは菊花賞の施行時期になってしまいますから…(^^;
GTシーズンが幕を開けると、コラムを書く材料も機会も増えると思っておりますので、
どうぞ今後とも宜しく御願い致します。 m(_)m
皆さんも、1度は夜空を駆ける流れ星をご覧になったことがあるだろう。
瞬く間に鮮やかに光り輝き、消えうせてしまう。我々の目にはそう映る流れ星は、
実は遥か彼方の宇宙で様々なものと戦いながら、長い長い旅を続けているのだ。
我々が目にするのは、その長い長い旅の中でのほんの一瞬の輝きに過ぎない。
スターマンという馬は、その名の通り、星のような、まさに流れ星のような馬だっ
た。
日本ではあまり聞き慣れないワイズカウンセラーを父に持つ持ち込み馬として、ス
ターマンは
栗東の長浜厩舎に入厩、'93年10月16日の京都での新馬戦(ダート1400m)、
河内騎手を背に人気に応えて快勝。
内容や勝ち時計などから2勝目は容易かと思われたものの、結局500万条件脱出に4戦を要し、
皐月賞への出走は叶わなかった。
'94年4月のれんげ賞で500万条件を卒業、続いて6月の白藤Sも快勝し、
いよいよそ の素質を発揮し始めた スターマンだったが、この頃のローテーションを見てみると、
陣営は慎重かつ余裕の あるローテを組み、
短い距離を使っていることが判る。もしかすると、
この頃の陣営は、彼の素質に期待 を寄せながらも、
マイラーとして認識していたのかもしれない。
しかしスターマンが無事に夏を越すと、陣営は中京で行われる神戸新聞杯への出走に
踏み切る。
そしてこのレースで重賞2勝馬メルシーステージ、皐月賞3着・ダービー4着のフジ
ノマッケンオーらを
下した スターマンは、あの京都新聞杯へ出走することになる。
1994年10月16日、阪神競馬場。
朝日杯3歳S・共同通信杯4歳S・スプリングS・皐月賞・ダービーと重賞5連勝、
圧倒的な強さで勝ち進んできた二冠馬ナリタブライアンが秋初戦にここを選んできた。
当然のことな がら、圧倒的1番人気。
ダービー2着、セントライト記念3着のエアダブリンが2番人気。
スターマンはそれに続く3番人気に支持された。
ナリタブライアンが初めて阪神で走るとあって、場内は発走前から宝塚記念並みの熱気と興奮に
包まれていた。
ゲートオープン。
テイエムイナズマがハナに立つ。
メルシーステージは控えて2番手。
3番手に関東馬フェスティブキング。
そしてゼッケン9番のスターマン。
その後ろ、いつもより早めの5番手にエアダブリン。
それからマルカオーカン、そしてその外にゼッケン6番・白いシャドーロールのナリ
タブライアン。
その後ろに3頭、ゴーゴーゼット、アドマイヤコール、シンガリにバンブーフェリーニ。
10頭が固まったまま3コーナーへ。
逃げていたテイエムイナズマは早くも後退気味に。
ナリタブライアンが6番手から5番手、4番手を伺う勢いで外から進出。
4コーナー、ナリタブライアンが3番手からエアダブリンを交わし、直線入り口で早
くも先頭に立つ横綱相撲。
以下は当時の杉本清アナウンサーの実況。
"1番外、白いシャドロールが揺れて、早くもナリタブライアン先頭に立つか!
ナリタブライアン先頭に立った、ナリタブライアン先頭だ!"
"エアダブリン懸命に食い下がる、エアダブリン懸命に食い下がる!"
"そして内の方からスターマンが来た! 内からスターマンが来るっ! 内からス
ターマンが来たっ!"
"ナリタブライアン、おぉっと内からスターマンッ!"
(一瞬沈黙)
"…ナリタブライアンピンチッ!苦しいっ"
"かわったぁぁ!!"
(絶句)
"…スターマンッ!!"
"いやぁスターマン! 藤田は怖いっ!!"
どよめきが沸き起こる阪神競馬場。
静まり返った放送スタジオ。
鮮やかに、実に鮮やかにインを掬ったスターマン。
彗星の如く現れた上がり馬が、春2冠を制した無敵の王者に1年ぶりの土をつけた瞬
間、
競馬関係者や ファンの間に流れる空気はまるで凍りついたかのようだった。
"ナリタブライアン 3冠へ黄信号"
このような声も一部ではささやかれたが、スターマンの父・ワイズカウンセラーが長
距離で
全く実績がないことや、ダービー2着のエアダブリンが秋2戦連続3着だったこともあって、
結局、菊花賞当日もナリタブライアン 断然ムードが京都競馬場を占めていた。
2番人気はダービー3着・ラジオたんぱ賞でタイキブリザードを下し、
福島民報杯で古馬を一蹴して来たヤシマソブリン。
3番人気エアダブリン、4番人気にスターマンが推された。
レースはナリタブライアンが3000mでも全くお構いなしといった感じで早め先頭。
直線は後続をちぎる一方の独壇場。
力の違いをイヤと言うほど見せつけて、シンボリルドルフ以来10年ぶり5頭目の3冠
の偉業達成となった。
稍重の馬場ながら、勝ち時計3.04.6は前年、半兄ビワハヤヒデが記録したレコー
ドをさらにコンマ1秒
短縮のおまけつき。
7馬身後方の2着争いはヤシマソブリンがエアダブリンを抑え込んだ。
4着にセントライト記念を制したウィンドフィールズ。
スターマンは距離の壁と馬場に泣いて5着に沈んだ。
その後、12月の鳴尾記念で57.5キロのハンデと2500mの距離を克服して古馬を蹴散ら
したスターマン
だったが、 有馬記念には出走せず、翌'95年1月のAJCCに参戦、1番人気になったが雨でぬかるんだ
馬場を気にしてか5着に敗れる。
さらに追い討ちをかけるように屈腱炎発症。
1年半の長期休養を余儀なくされる。
'96年7月14日、小倉競馬場KBC杯。 脚元への負担を考慮してか、ダート1700m戦での復帰。
2番人気9着。
8月11日、小倉記念。
熊沢騎手を背に、5番人気。
4歳牝馬、51キロの軽量のヒシナタリーに先着を許すも、2着入線。
完全復活を賭けて、9月8日、朝日チャレンジカップ。
目下4連勝中の5歳馬、マーベラスサンデーに次ぐ2番人気に支持される。
レースはマーベラスサンデーが鮮やかに5連勝を飾ったが、1キロ重い58キロを背負ったスターマンは、
持ち前の抜群の勝負根性で最後まで食い下がり、2着。
同斤量となる秋の天皇賞での逆転が期待された。しかし…
彼もまた、過去の数多いる素質馬たちと同様に、実に運のない馬だった。
脚部不安再発、そして無念の引退。
2年11ヶ月の間に僅か14走しかできなかった事実が、能力のある馬がいかに脚部不安
に悩まされるかを
如実に示している。
浦河のイーストスタッドで種牡馬入りしたスターマンは、97年初供用、98年誕生した初年度産駒のうち
11頭が血統登録され、今年(2000年)から来年にかけてデビューする。
既にホッカイドウ競馬でデビューした産駒もいるが、奇しくも種牡馬としても同期の
ナリタブライアン産駒や
ネーハイシーザー産駒、トロットサンダー産駒などが既に中央勝ち上がり馬を出すなど、
内国産の新種牡馬たちが好調なだけに、スターマンの仔供が中央で勝ち上がるのも、
そう遠くはないような気がする。
父の無念を晴らしてくれるような、丈夫で勝負根性溢れる産駒の出現を期待したい。
スターマン競走成績
開催日 |
競馬場 |
レース名 |
馬場 |
格 |
騎手 |
斤量 |
距離 |
タイム |
人気 |
着順 |
93/10/16 |
京都競馬場 |
新馬 |
良 |
新馬 |
河内 |
53 |
D1400 |
1.26.5 |
1 |
1 |
93/12/11 |
中京競馬場 |
樅の木賞 |
良 |
500万 |
角田 |
54 |
1200 |
1.10.9 |
4 |
3 |
94/01/15 |
阪神競馬場 |
寒梅賞 |
良 |
500万 |
河内 |
55 |
D1400 |
1.28.3 |
2 |
8 |
94/03/19 |
中京競馬場 |
4歳500万以下 |
良 |
500万 |
河内 |
55 |
D1000 |
1.01.1 |
4 |
5 |
94/04/17 |
阪神競馬場 |
れんげ賞 |
良 |
500万 |
藤田 |
55 |
1200 |
1.09.8 |
5 |
1 |
94/06/05 |
阪神競馬場 |
白藤S |
良 |
900万 |
藤田 |
55 |
1600 |
1.34.5 |
3 |
1 |
94/09/18 |
中京競馬場 |
神戸新聞杯 |
良 |
GU |
藤田 |
56 |
2000 |
2.00.6 |
3 |
1 |
94/10/16 |
阪神競馬場 |
京都新聞杯 |
良 |
GU |
藤田 |
57 |
2200 |
2.12.1 |
3 |
1 |
94/11/06 |
京都競馬場 |
菊花賞 |
稍 |
GT |
藤田 |
57 |
3000 |
3.05.9 |
4 |
5 |
94/12/10 |
阪神競馬場 |
鳴尾記念 |
良 |
GU |
藤田 |
57.5 |
2500 |
2.33.3 |
1 |
1 |
95/01/22 |
中山競馬場 |
AJC杯 |
良 |
GU |
藤田 |
57 |
2200 |
2.14.8 |
1 |
5 |
96/07/14 |
小倉競馬場 |
KBC杯 |
良 |
OP |
角田 |
59 |
D1700 |
1.49.0 |
2 |
9 |
96/08/11 |
小倉競馬場 |
小倉記念 |
良 |
GV |
熊沢 |
57 |
2000 |
2.00.9 |
5 |
2 |
96/09/08 |
阪神競馬場 |
朝日CC |
良 |
GV |
藤田 |
58 |
2000 |
1.59.6 |
2 |
2 |
通算成績 14戦6勝
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